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施工例

深谷市 華蔵寺鐘楼門葺き替え工事

単なる葺き替えではなく、ワンランク上の仕上がりに!

タイトル

築後323年の鐘楼門を葺き替え
文化財の価値を一層向上

本葺き仕様一体瓦ならではの重厚感

深谷市 華蔵寺鐘楼門

葺き替えだからこそ新築よりも難しい部分もありました。
私たちが心をこめた仕事をご覧いただけると嬉しく思います。

建久五年(1194年)新田義兼が開基し、僧・弘道の開山したお寺で800年超の歴史を誇るお寺です。

鐘楼門施工前
葺き替え前の鐘楼門
残念ながら傷んでいる部分がありました。
大日如来像
市指定重要文化財:大日如来像
大日堂
市指定重要文化財:大日堂
こちらも施工させていただきました。

築後323年の歴史の鐘楼門が重厚感をまとって装いを新たにしました!

鐘楼門施工後

国宝等に用いられる本葺き仕様の瓦を
ご採用いただきことができ、重厚感のある屋根に
仕上げることができました。

屋根重量が1/4に軽減し
耐震性も向上しました。

お客様より

本堂

今回の葺き替えに関しては、以前大日堂、山門とお世話になったときのご指摘いただいた言葉を思い出します。「ご住職の代で鐘楼門は葺き替えるようになりますね。」まったく飯島さんご指摘のとおりでした。出来栄えに関しては本当にきれいにできたと思います。満足しております。

このあともお寺の施設についてお世話になることがあるかと思いますが、またよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

担当者より

担当者写真

私たちも鐘楼門の歴史に恥じないよう、心をこめて工事をさせていただきました。30年以上は修理の必要もありませんし、次回の葺き替えは100年以上先になると思います。

工事期間中のお茶の振る舞いや工事終了時の昼食、重ねて「鐘楼門の修復竣工祝賀会」へのご招待等、いろいろな心遣い本当にありがとうございました。私たちも責任あるお仕事をお任せいただき、感謝しております。

工事途中に足場の上まで来てご覧いただいた際の、「きれいだ。」という一言を大変うれしく思いました。この一言を勲章に私たちも一層精進して行く所存です。本当にありがとうございました。

今回の鐘楼門修復工事のポイント

ご要望タイトル画像お客様のご要望

修復前の現状

  • 昔ながらの工法で工事されていたため、全体的に瓦が動き始めていました。このことが根本的な原因となって、雨漏りが一部で発生して野地板が腐食することとなりました。
  • 加えて築後323年経過しているため、全体的に屋根を軽量化することも必要でした。
  • 歴史ある鐘楼門であるため、その伝統を後世に引き継ぐべく今まで以上に重厚感のある仕上がりにしたいとのご要望がありました。
ニーズ1

1重厚感がある本葺きの屋根

華蔵寺は新田家の武運長久を祈願する菩提寺として始まり、鐘楼門も築後323年経過しています。そこで、社寺のみで採用される特殊な工法である本葺きで工事したいとのご要望です。

ニーズ2

2100年間長持ちする屋根

前回の葺き替えが半世紀余り前だったこともあり、多少の修理があったとしても長く施設を維持できる屋根にしてほしいとのご希望でした。

ニーズ3

3基本的な屋根の形は現状のままにしたい

この鐘楼門は、震災や戦争を経た後も、建てて以来の姿を維持して来ることができたため、傷んだ木材は交換しますが、屋根の反り具合などはそのままにします。

今回の鐘楼門修復工事のポイント

築323年の鐘楼門が生まれ変わります。重厚感も増して 装いも新たに! 耐震化にも配慮しました!

葺き替え工事のポイント

本葺き仕様一体瓦を使用

当初、お客様からは本葺きをご希望されていましたが、私たちは以下の点を考慮して本葺き仕様一体瓦(以下、一体瓦)をご提案し、ご採用いただきました。

・屋根の勾配が一般の社寺建築物よりも急であること

・築後323年経過しているため、一層の軽量化を図る必要があること

・費用の面からも有利であること

工事のポイント1

歩くのが大変です

45°の傾斜を超す場所も

葺きあがりは本葺きそのもの

本葺き仕様一体瓦
本葺き仕様一体瓦の仕上り
本葺き瓦
本葺き瓦の仕上り

「本葺き瓦」、「一体瓦」とも主として社寺で用いられる特殊な瓦です。

一般の住宅で用いる日本瓦(和型)よりも仕上がりが力強く、ダイナミックです。

両方とも私たちが施工させていただきましたが、仕上がりは見分けがつきませんね。

本葺きよりも丈夫です

一体瓦の1枚は本葺きでは3枚の瓦から構成されます。この3枚は釘や針金で止めてずれることを防ぎますが、一体瓦の場合は最初から1枚の製品ですからその必要がありません。

構造がシンプルになるのですから、痛む場所が減って屋根が丈夫になることをお分かりいただけると思います。

勾配が急な時には特に効果があります。

一体瓦の構成
本葺き用の3種類の瓦が一体化

耐震化にも大きく貢献しました

葺き替え前は、写真左のように土で屋根を維持する工法が用いられていたため、大量の葺き土が使われていました。

現代の工法では、ほとんど用いないために屋根が大変軽量化されます。葺き土の量は40分の1。屋根全体の重さも約4分の1になり、耐震化が進みました。

これまでの工法と今回の工法の画像
左が本葺き、右が今回の工法

日本瓦(和型)との比較

本葺き仕様一体瓦は日本瓦に比べて凹凸がはっきりしていてダイナミックな印象を受けます。

さらに、凹部が2段に見えるようにデザインされていて、日本瓦のほぼ2倍の枚数の瓦で葺かれているように見えます。

瓦の場合は細かく葺いてある方がきれいに見えるため、ダイナミックかつ、美しい仕上がりが可能です。

本葺き仕様一体瓦
今回の工事で使用した瓦です。社寺のみに使われる特殊な瓦で採用されることは本当に希です。
本葺き仕様一体瓦の写真
日本瓦(和型)
一般の社寺の建物や住宅に用いる瓦です。屋根が柔らかく葺きあがります。
日本瓦(和型)の写真

鐘楼門の葺き替え工事が始まりました!

工事風景

いよいよ工事が始まりました。

これまでとは工法が違うので古い瓦は全て処分し、野地板や垂木まで全て交換しました。

新築であれば、ある程度屋根の反り具合など事前に打ち合わせをすることができますが、今回は反り具合などの屋根の基本形はそのままです。

この鐘楼門の反り具合は、一般の社寺建築物よりもかなり大きいので新築の場合よりもおさめ方がかなり難しいところがあります。

役物は釘または針金で緊結するため、事前準備をしておきます

事前準備の作業風景

スタッフ

社寺の建築物は勾配が急で棟も高く積み上げます。ですから一般住宅以上に色々な配慮を心がけています。

上の写真左は「掛け巴」と言って写真では小さく言えていますが、普段普段目にしないような、とても大きな釘で止めますから、私が乗っても全く動きません。事前に釘穴をあけておきます。

棟を積む時には漆喰を使うことは皆さんもご存じですね。社寺では、瓦と瓦の間の漆喰が見える部分にこのカニ面戸を入れて漆喰が見えないように蓋をしてしまいます。これも一つ一つ針金で緊結するため、前もって縛っておきます。地味な作業が多いです。

平葺きが始まりました

唐草画像
葺き始めは本葺き
唐草画像2
巴の先端を平らに

一体瓦ではありますが、葺き始めの部分は「軒唐草」と「軒巴」に分かれています。社寺の屋根は端の部分で捻じれていることが多く、このほうが工事が容易です。

巴の先端が平らになるようにして行きます。曲線部分が多い社寺の建築物ですが、こうした直線が曲線部分をひきたてます。

小さなことの積み重ねが大事だと思います。

平葺きの画像

屋根面積のほとんどは平葺きであるため、屋根の見かけはほとんど平葺きで決まってしまいます。

この部分の良しあしが、屋根の丈夫さ、美しさを左右します。一番大事なのは「平ら」と「まっすぐ」です。私たちは瓦の角の部分を直線になるようにそろえています。一列に30枚並んでいれば、30の瓦の角をまっすぐそろえて行きます。

まっすぐに葺けているでしょうか。

蓑甲に取り掛かります

蓑甲の段差の画像

スタッフ 飯島

瓦が置いてない部分で、屋根が折れ曲がっています。こういう部分を蓑甲と言います。こちらの鐘楼門はこの段差が非常に大きく、最大で30cm以上あります。

新築であればこの部分をどの程度おるかということは打ち合わせて作ることが可能ですが、葺き替えの場合は既にできている部分に合わせて工事するしかありません。

今回のように社寺の葺き替えの場合は新築よりも難しいところがあります。

掛け唐草をとりつけました
掛唐草を付けました。ここで蓑甲の出来がほぼ決まります
掛け巴を付けました
掛巴を付けました。普通の巴の2倍くらいの大きさがあります
カニ面戸を入れました
カニ面戸を入れました。棟の下の瓦には全てこの瓦を入れます
野地の段差を解消します
隣の列と野地の高さが同じになるように漆喰で段差を解消します
桟瓦を葺き終わりました
蓑甲まで桟瓦を葺き終わりました。この時、ちょっとした工夫が必要です
袖丸をひいて蓑甲が完成です
最後の側に袖丸をひいて蓑甲が完成です

大棟をとります

スタッフ飯塚

大棟は両端で上げますが、基本は平らでまっすぐです。

社寺の建築物は曲線部分が目立ちますが、曲線部分がきれいに見えるかどうかは、平らかつまっすぐな部分をどこまで正確に工事できるかで決まってくると思います。

ですから、こういった建物を見るときには平らでまっすぐな部分にも注目してみていただけると嬉しいと思います。

台面をとります
一番下の棟が平らでないと一番上まで影響しますから、最も大切です。
のし瓦は全て針金で結束します
棟に使うのし瓦は全て針金で緊結します
途中で軒唐草を使います
通常はこのままのし瓦を積み上げるのですが、今回は間に軒唐草を使います
軒巴を付けました
軒唐草の上に軒巴を付けました。デザイン的には、これですごく立体感が出ました
カニ面戸を入れます
瓦は細かく葺かれているほどきれいに見えます。私見ですがカニ面戸を使う理由はここにあるのではないかと思います
もう一度台面をとります
ここでもう一度台面をとります。あとはのし瓦を平らに積み上げて行きます
残すところあとわずかです
大棟を上から見ています。のしとのしの間隔が一定寸法以下になるとそれ以上は積めません。のこりわずかです
大棟が完成しました
大棟が完成しました。棟が平らでまっすぐになるように、魂を込めました

隅棟をとります

隅見棟をとるときに気を付けたこと

隅棟の写真

隅棟は下り棟よりも低いところからとり始めます。ですから、下り棟とのバランスで相対的に低くなければなりません。

そのために隅棟の終端部分はなるべく低くするために、本葺き瓦の一番高くなる部分を電動工具で平らに切除しておく部分が出てきました。

カニ面戸を入れます
漆喰が見えてしまうところには全て、隅棟用のカニ面戸を入れます
隅棟の台面がとり終わりました
台面をとり終わりました。隅棟はなだらかな弧を描くように心がけています
二の鬼まで隅棟がとり終わりました
二の鬼までが仕上がりました。隅棟に鬼が2つ付くので二の鬼と言います
隅棟をとり終わりました
鬼際を厚くして重厚感を出してあります

下り棟をとります

台面をとり終わりました
隅棟の台面をとったときに続けて下り棟をとっています。この方法はあまり採用されない方法ですが、長持ちします
下り棟が完成しました
下り棟上端の高さと大棟の高さを常に頭に入れて作業を進めて行きます
二の鬼まで隅棟がとり終わりました
大棟との取りあいです。この方法もあまり採用されませんが、長い目で見たときにメリットが大きいと思います

 

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