HOME施工例伊勢崎市八坂神社様

リフォーム・修理の内容、工期、予算(費用・価格)等の基本データ

タイトル

土葺きの神社の屋根修理

修理箇所が複数にわたり大がかりな修理となりました

伊勢崎市 八坂神社様

親の世代から子の世代へ。こうして神社の伝統は受け継がれてゆきます。時代とともに神社が置かれる環境は変わって来ましたが、数百年単位で受け継がれてきた伝統を次の世代へもバトンタッチしたいものです。
修理を効率的に行うコツは早め早めの対応です。修理が必要な場所を放置してしまうと、却って修理費用が大きい金額になってしまいます。

今回の工事のポイント

ご要望タイトル画像お客様はこの様にお考えでした

1古い役物で利用可能な物があれば、できるだけ利用してほしい

神社やお寺に使われている役物はデザインや種類が特殊なものが多いです。しかも、今回は前回の立て直し時に特注した瓦が数多く使われており、現在では入手困難なレア物ばかりの状況です。神社の伝統を守って新築当時の様子を後世に伝えるためにも、私たちも是非使わせていただきたいと思いました。また、そうすることで修理費用を安く抑えることにもつながります。

2建物自体が古いので、必要なところがあれば合わせて修理してほしい

神社やお寺は公共的な建物です。多くの参拝客が訪れることもあるので、安全面とデザイン面の両面から考えて必要な修理をできるだけ予算内で収まるように知恵を絞りました。

八坂神社拝殿:下り棟の鬼の付けなおし作業。 既に棟の一部が崩れてしまっていたため、土台部分から積みなおしました。

葺き替え工事のポイント

工事完了後の拝殿の下り棟です

拝殿:下り棟の鬼付け替え工事の画像をご覧いただきます。

修理前の拝殿の下り棟
修理前の拝殿の下り棟

雪の重みで落下してしまった鬼が軒先までズレて来てしまいました。既に棟が崩れてしまったため、棟の中で棟瓦を固定するために使われている泥が露出し、数年来の風雨に晒されて脆くなっている状態です。

修理後の拝殿の下り棟
修理後の拝殿の下り棟

損傷前の状態に復元することができました。屋根の反り具合と、ほぼ同様の反り具合で下り棟をとりました。

使える瓦を選別するため、棟瓦を整理します

使える棟瓦の選別

文化財の修復工事では、可能な限り元々使ってあった場所に戻すように指示があります。

私たちもできる限りそのように取り組んでいますが、今回の場合は既に棟が崩れてしまい、どこに使ってあったのかが不明な状態であったため、使える瓦と、そうでない瓦を選別することで可能な限り古い瓦を使うように努めました。

本殿と拝殿をつなぐ渡り廊下の屋根勾配が緩やかであったため、そこを利用して棟瓦を状態別に分類して使えるように整理しました。

八坂神社と国宝・妻沼(熊谷市)聖天山聖天堂との類似点
八坂神社の彫刻

八坂神社の彫刻は国宝・妻沼(熊谷市)聖天山聖天堂の彫刻と非常に良く似ていると言われています。

所在地が近いために互いに影響しあった可能性がありますが、それ以外にも聖天山の工事期間中に利根川が氾濫し工事が中断した際、聖天山の工事に携わった彫刻士が、この八坂神社の彫刻工事を行ったため、とも言われています。

いずれにしても、八坂神社の彫刻は非常に立派で、近隣地域で滅多に見ることのできない精巧な作りとなっています。一度ご覧ください。

八坂神社の彫刻

下り棟の積み直し作業

神社やお寺に屋根は勾配が急な場合が多いです。
反った屋根が多いですが、これは屋根の勾配を実際よりも緩やかに見せる技法のひとつで、一番緩やかな軒先部分でも30度くらい、一番急な棟の部分では90度を超す例もよくあります。

こうした急勾配の屋根で無造作に棟を部分撤去しようとすると棟全体が崩れ落ちてしまうことがあるため、撤去作業自体も熟練を要します。

加えて、下り棟が崩れ落ちないように支える役割をするのが鬼の役目でもあるので、鬼の固定方法も工夫が必要です。

鬼付け
鬼付け下り棟を積み直すのに先立って鬼を付けます。勾配が早い屋根なのでこうすることで棟が崩れてしまうのを防ぎます。更に勾配が急な場合や棟が長い場合は固定の為の銅線を2本使う場合もあります。
土台部分の南蛮漆喰
下り棟土台部分の南蛮漆喰を置きます八坂神社の拝殿には他に3つ下り棟がありますが、これらは土台部分が現存しているので、これらの曲線形状と同一になるように土台部分の南蛮漆喰を置きます。この部分の置き方が棟の出来栄えを大きく左右します。
1段目の施工
1段目の施工全部で6段の棟を積みますが、その1段目を積みます。この部分の出来が棟の出来栄えを決定します。地震の際にも崩れないように奥の棟瓦と手前の棟瓦は針金で緊結してあります。
2段目の施工
2段目の施工上の段になるにしたがって、南蛮漆喰の量は少なくなってゆきますが、下の段よりも上の段のほうが勾配が急になるように留意することで、雨漏りしにくい棟になります。
3段目の施工
3段目の施工ここまで棟を積んでくると鬼の高さと棟の高さを比較しながらの作業になります。
棟の高さよりも鬼の高さの方が高くなるように、1段ごとに高さを確認しながら棟を積む場合もあります。
4段目の施工
4段目の施工既に十分勾配が付いているので、南蛮漆喰の量は僅かになります。勾配を付けすぎると棟が崩れやすくなるので、1段目や2段目の様に雨漏り防止の観点から勾配を付ける段階と逆の注意を払うようになります。
5段目の施工
5段目の施工5段目の上に丸(一番上に使う棟瓦で断面形状が円形の為、丸と言います)を被せるので固定する為に南蛮漆喰を置きます。現代の製品と異なり丸が焼成段階で捻じれている場合があるので、ガタツキが無いようにする配慮です。
棟の高さよりも鬼の高さの方が高くなるように、1段ごとに高さを確認しながら棟を積む場合もあります。
6段目の施工
4段目の施工丸を被せて下り棟の完成です。棟よりも鬼の方が若干高くなっています。極端に鬼の方が高すぎても違和感が出てくるのでバランスに注意しています。

八坂神社拝殿:軒瓦(唐草)の交換修理の作業。軒先部分は屋根の顔。さっぱりとした印象で参拝客を出迎えることができます。

葺き替え工事のポイント

工事完了後の軒先部分です

破損して欠落していた部分もありましたが、きれいに修復できました。

修理前の拝殿の軒瓦
修理前の拝殿の軒瓦

欠落部分もありましたが、そのままの状態で手付かずであったため非常に目立ちました。

修理後の拝殿の軒瓦
修理後の拝殿の軒瓦

欠落部分もなくなり、神社の顔に相応しい面持ちになりました。

新しい唐草を古い唐草のサイズに合わせて加工します

現在はJIS規格で大きさが厳格に管理されている瓦ですが、八坂神社の建設当時はJIS規格が存在しませんでした。従って、新しい瓦と古い瓦では寸法が異なります。そこで、新しい瓦の方が大きいため古い瓦に合わせてカットします。

加工前の軒瓦
加工前の軒瓦加工していない工場出荷時の軒瓦。古い唐草よりも横幅が9mm程度大きく、重なりが40mm程度少ない寸法です。
加工後の軒瓦
加工後の軒瓦横幅を合わせ、古い瓦と重なりが同じになるよう加工しました。

施工時の施工方法に従って軒瓦を付けます

敷きベラの画像

この当時は「敷きベラ(画像の赤い矢印部分)」と言い軒瓦の下にもう一枚別の瓦を敷いて軒瓦が施工されていました。
瓦が2重になっているので、仮に雨漏りしても屋根下地が腐食することはありません。

釘止めした軒瓦は、軒先で軒瓦以外の瓦を支える役割を果たしているので、屋根下地が腐食しない状態で維持できることはとても大切です。

八坂神社拝殿:向拝軒瓦(唐草)の交換修理の作業。前項のほか、向拝の軒瓦も交換しました。

葺き替え工事のポイント

神社やお寺で参拝者が本尊等に手を合わせるスペースに大きな庇が出ている場合があります。この庇のことを向拝と言います。
向拝の軒瓦も破損していた為、交換作業を行いました。

軒瓦を交換する際、作業に支障のあるものを一度撤去します

軒瓦を交換する際、作業に支障のあるものを一度撤去する画像

赤丸部分が古い軒瓦です。赤丸中央部から右上の向けて大きな割れ目が入っており、既に落下寸前でした。

撤去前は瓦の一部が欠損しているため、美観の為に新品と交換することになったのですが、参拝者に落下する可能性があったことから安全面からも交換作業が必要だったことが分かりました。

神社は公共の建築物であることから、修理には安全面からも配慮して早めの修理が必要なことを実感し、私たちも良い勉強になりました

新しい軒瓦を付けます

前項の軒瓦交換と同様、古い瓦と同じサイズに加工してン軒瓦を付けます。

向拝でも敷きベラが使ってあったので、そのまま以前使ってあったものが使用できました。赤丸部分が以前から使ってあった敷きベラです。

交換前に使ってあった敷きベラ
交換前に使ってあった敷きベラ
交換後の新しい軒瓦
交換後の新しい軒瓦

南蛮漆喰を置いて、巴と丸を付けます

軒瓦を付けたので、巴と丸を付けて元どおりに戻すため、南蛮漆喰を置きます。
隣に既存の丸が引いてあるので、同じ高さになるように配慮します。

南蛮漆喰を置きます
南蛮漆喰を置いた画像
巴と丸を付けました
巴と丸を付けた画像

八坂神社:向拝の唐草交換作業が終了しました

八坂神社:向拝の唐草交換作業が終了した画像

ひと際色が良い赤丸を付けた軒瓦が交換した軒瓦です。
向拝の唐草は参拝者が真っ先に目にする部分なので是非とも修理したい場所の一つでした。

キッカケは赤丸部分の円形をした部分が欠落していたため、美観を考慮して交換作業を行ったのでしたが、作業を始めてみると既に大きなひびが入っていて欠落寸前の状態。
安全面からも必ず修理する必要がある場所でした。

八坂神社拝殿:隅棟の修理。崩れてしまっている部分もありましたが、ほぼ元どおりに修復することができました。

葺き替え工事のポイント

修理前の隅棟の状態です

修理前の隅棟の状態画像

この隅棟は向拝の裏側屋根で、裏側からは本殿との位置関係から死角になっている状態であるため、長年この状態に気が付かないままになっていました。

その為、一部が既に崩れてしまっており、これまで使われていた瓦が見つかりませんでした。

しかし、同様の瓦が神社で保管されていたため、それを使って修理することができました。

既存部分をできる限り残して隅棟を積み替えます

画像は隅棟の2段目を積む作業を掲載しています。

棟瓦は1枚を中心で2つに割り左右一対にして使用しますが、納まりの関係で、勾配が早い屋根などでは左右一対にせず、軒側だけ棟瓦を積む部分が生じます(赤丸よりも上の部分)。
今回は次の3段目から一対にして棟瓦を使っています。

2段目を積む為の南蛮漆喰
2段目を積む為の南蛮漆喰を置いた画像
積終えた隅棟の2段目
2段目を積んだ画像

3段目の棟を積みました

3段目の棟を積んだ画像

2段目では棟瓦を一対で使わず軒側のみ棟瓦を積みましたが、3段目では一対で棟瓦を使っています(赤丸部分が軒側の棟瓦と対になる棟瓦です)。

この隅棟は棟瓦を3段しか積みませんので、赤丸部分は3段目のみ積むことになります。

隅棟の修理が完成しました

4段目の棟を積んだ画像

一部が崩れてしまって修理も難しく見えた隅棟でしたが、画像のように元どおりに棟を積み終えることができました。

お寺や神社の建物は古いものが多く、時間の経過に伴って屋根材の下地に凹凸が生じています。

仕上がりを重視するのであれば、当然すべて撤去して新しく積み替えるのがベストですが、それでは修理費用が大幅に上昇してしまいます。
そこで修理費を抑える場合は、既存部分をできる限り残して修理する方法が選択されます。

工期、予算(費用・価格)等のまとめ

工事の内容

2か所の鬼を付替えましたが、それに伴い棟を2本積み替えました。
その際に積み替えが必要な棟が新たに1本瓦見つかり、合計3本の棟を積み替えました。
下り棟2か所の鬼を付替えました。
鬼は既存の物を使うことができたため、汚れを落としたうえで使用しました。
平葺き
軒先周辺の瓦が破損等しており、それらを施工当時の方法で修理しました。
軒先以外の瓦も破損しているものは交換しました。

工期、工事費用等の内容

工期
3日間
費用
10~15万

 

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